3-35

そこにコンコンとノックの音。

紗奈
は、はい…

カナト
紗奈ちゃん、入るよ

紗奈
う、うん…

カナト
…紗奈ちゃん、さっきはきつく言ってごめんね

カナト
おかゆ作ったから、もしお腹が減ってたら…どうぞ

紗奈
……

紗奈
ありがとう…カナトさん…

紗奈
(カナトさんが作ったおかゆか…。意外と家庭的なんだな…)

湯気がもくもくと立っていたので

ふーふーと息をふきかけ覚ます。

…そしてぱくっと一口…。

紗奈
あ、おいしい…

紗奈
(……幸せだな…)

カナト
…そう、よかった

紗奈
……

紗奈
…カナトさん…。私、強くなるから…

カナト
…紗奈ちゃんは強くならなくていいよ

紗奈
守られているだけじゃ嫌だよ…

カナト
君を危険な目に遭わせたくはない

紗奈
大丈夫だよこれくらい…。なんでもないよ…

紗奈
だから…一緒に…いたいよ…

私は、思わずカナトさんにしがみついてしまう…。

カナト
紗奈ちゃん…?

カナト
……

カナトさんは私をぎゅっと抱きしめ返してくれた。

…カナトさんはしばらく無言だった。

紗奈
(……カナトさん…?)

紗奈
(こんなカナトさんは初めてだ…)

紗奈
(…カナトさん…)

紗奈
あったかい…安心する…

カナト
……

紗奈
…そういえばカナトさん、初めて会った日も優しかったな…

紗奈
雪の日に、公園で泣いてたら、声をかけてくれたんだよね…

紗奈
あの時、すごく心細かったから、嬉しかった…

紗奈
ん、あれ…でもあれはパトローラーの仕事の一環か…

紗奈
……

カナト
……

カナト
紗奈ちゃんと会ったのは、あの日が初めてじゃないよ

紗奈
え…?

紗奈
あれ…?

紗奈
……そう…だっけ…?

カナト
……

カナト
いや、なんでもない、忘れて

カナト
…俺、ちょっと今日おかしいみたいだ…

紗奈
……?

そういうとカナトさんは私からそっと体を離した。

紗奈
……

カナト
俺、台所…片付けてくるよ…

紗奈
う、うん…

少し、悲しそうな瞳で、
部屋を出て行ってしまうカナトさん…。

紗奈
(……どうしたの、カナトさん…)

紗奈
(今日は本当に、変だよ…)

 

>>