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カナト
……

カナトさんが触れるとりっちゃんは突然ガクッと気を失った。

紗奈
りっちゃん!?

カナト
大丈夫。眠らせただけだ。…あまり並行世界の人間が近づきすぎると、危ないんだ

カナト
律くんみたいに、紗奈ちゃんに近しい存在には、激しく影響を与えてしまうだけじゃなく、世界も…歪む原因になる

紗奈
……

カナト
向こうの世界の紗奈ちゃん

カナト
…かわいそうだけど、君には元の世界に戻ってもらうよ

あーまってまってダメダメ。それじゃ契約が成り立たない

ボン…っと
突然現れるラビス。

カナト
現れたな…

ラビス
世界はさ、歪んでいる方がおもしろいよ。クスクス

ラビス
僕は感情的で欲望のままに生きる人間をみるのが大好きさ。大体、世界なんてものは、もともといろいろ歪んでるしね♪

ラビス
ってことで、君には邪魔させないよ

ラビの手元が怪しく光る。

瞬間…パーンという音と共に、カナトさんは
四角く切り取られた謎の物体の中に閉じ込められてしまった。

紗奈
カナトさん…!!

ラビス
あっははー!いっちょあがり!

ラビス
さてさて、それじゃ、君は向こうの世界に送ってあげるよ♪

ラビは私の方をみてそう言った。

紗奈
いやよ…!!

ラビス
んー

ラビス
まあでもこのまま送っちゃうだけなのも面白くないな

ラビス
そうだ、よし、いいこと考えちゃった。こういうのどう?紗奈ちゃん対決

ラビス
この世界に残ることをかけて、紗奈ちゃん同士で戦うの。この世界にとどまりたいという思いの強い方が、ここに残る

ラビス
こっちの世界の紗奈ちゃんが勝ったら、そこの四角に閉じ込めたやつも、解放してあげるよ♪どう、面白そうでしょ

カナト
ふざけるな…!!

カナトさんが叫ぶ。

紗奈
この世界でずっと生きてきたのは私なんだから…!!りっちゃんだって大切に思ってる…

紗奈
私は、そこにいる紗奈なんかには負けないよ!!

ラビス
うーんいいね♪そうこなくっちゃ。ところで紗奈ちゃんは?

今度はパラレルワールドの紗奈に問うラビ。

パラ紗奈
…いいわ。私、そこにいる紗奈と、戦う

ラビス
うんうん。じゃあこれ貸してあげるね。想いの強さの分、なんと武器を生成できまーす。これで戦ってちょ

ラビス
精神に衝撃は感じるけど、体に傷はつかない、やっさしい仕様だよ♪

そういうとラビは、ぽいぽいっと謎のアイテムを投げてきた。

ラビス
それじゃ…始めー!!

私は…”パラレルワールドの私”と戦うことになった。

ずっとフェンシングをやってきたので
実戦にそこまで逃げ腰にはならなかった…のだが。

紗奈
…そんな…強い…

紗奈
うっ…

ガクっと膝をつく私。

カナト
紗奈ちゃん…!!

紗奈
はぁはぁはぁ…

紗奈
(そ、んな…どうして…どうして勝てないの。この世界で…ずっとがんばってきたのは、私…なのに…)

紗奈
(夢を追って、ずっとがんばってきたのに…)

パラ紗奈
ごめんね?この世界の私

パラレルワールドの紗奈に、
上から冷たく言葉を吐きかけられる。

ラビス
ね、もしかして、ここの世界の紗奈ちゃんは、恋を知らないんじゃない?

ラビスが言う。

紗奈
恋…?

ラビス
そ、だからパラレルワールドの紗奈ちゃんより弱い

紗奈
……

パラ紗奈
私は、りっちゃんがいないと…ダメなの。りっちゃんへの想いなら…負けない

そういうとパラレル紗奈は私の体に

”想いの強さの具現化”であるソードを突き立てた。

紗奈
ぐっ…ごほっ

体に電撃が走る…。

意識が…遠のく…。

ドサッ…

私は地面に倒れ込んだ。
体が…動かない…。

カナト
紗奈ちゃん…!!

紗奈
(私は…恋を知らないから…負けるの…?)

紗奈
(…確かに…燃えるような恋の体験はしたことない…)

紗奈
(いいな、とかドキッとすることはあっても…)

ラビス
恋、恋かぁ…

ラビス
あ、そうだ♪紗奈ちゃん、ちょっとそいつのこと好きそうだよね?その四角の中にいるやつのこと

ラビス
もし負けたらそこのそいつ、殺しちゃうっていう条件どう?

ラビス
だって、そいつ生きてたら、僕がいくら”あっちの世界の紗奈ちゃんの勝ちだ”って言ったって、そいつは世界の交換を認めないでしょう?

カナト
当たり前だ…!

ラビス
紗奈ちゃん?本気でやらないと、そいつ死んじゃったりね?どう、本気になってきた?

ラビス
名付けて、恋の力対決!どう?よくない?あはは!

パラ紗奈
何がプラスされようと、私のりっちゃんへの愛に勝てるわけないわ

パラレル紗奈はそう言うと、

再び私に襲い掛かってきた。

紗奈
ぐっ…

紗奈
はぁはぁ…

紗奈
(…紗奈…強い…。これが愛の力…?)

紗奈
(…でも…)

紗奈
…でも…あなたの愛したりっちゃんは…似てるけれど、この世界のりっちゃんじゃないんだよ…

紗奈
あなたと私がどこか違うように…。あなたの世界のりっちゃんは…あなたのりっちゃんは…。この人じゃないんだよ…。違う人なんだよ…

パラ紗奈
……っ!

その言葉に、パラレル紗奈は酷く動揺したようだった。
その瞬間、私のソードは

パラレル紗奈の体を貫いた…。

 

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