1-4

傘も持っていなかった私は、
とりあえず近くの公園に向かうと
屋根のついているイスの上に座った。

紗奈
(寒い…寒いよ…。私…これからどうしたら…)

涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

紗奈
うっ…ひっく…ぐす…

泣いてもどうにもならないことはわかっていたけど、
涙はどんどんこぼれおちていく…。

そこにザクザクと地面を踏みしめる音が聞こえた。

男の人
…お前、こんなところでどうしたんだ

男の人
…泣いてるのか…?

急に声をかけられ、ビクッとなる私。

顔をあげると…きれいな顔立ちの男の人が、
傘を持って立っていた。

紗奈
……

男の人
家出少女か…?

紗奈
……。家出…じゃないけど…行くところがないの…

男の人
……

紗奈
……

そこにぐぐーっとお腹が鳴る音が鳴り響いた。
もちろん私のお腹だ。

男の人
何も食べてないのか…?

優しく尋ねる声に、私はこくこくとうなづいた。

紗奈
(あったかい!あったかい!夢のようだ…!)

さっき会ったばかりだというのに、
男の人は私をレストランへと連れてきてくれた。

…もちろん少しは警戒したけれど、
雪降る真っ暗な公園に一人でいるよりは…
優しく声をかけてくれたこの青年を…信じてみることにしたのだ。

男の人
遠慮はしなくていいから

紗奈
う、うん…

突然現れた、この天使のような青年は、
自分のことを”カナト”と名乗った。

紗奈
お待たせしましたー!

おいしそうなご飯が並べられる。
空腹がピークに達していた私は、
さっそくご飯を口に運んだ。

紗奈
お、おいしい…

幸せをかみしめる。

カナト
よかったな

優しく微笑むカナトさん。

その表情にドキッとなる。

紗奈
(い、今更だけど、恥ずかしくなってきちゃった…)

紗奈
(すっぴんだし、スリッパだしジャージだし…。公園でわんわん泣いててご飯を食べさせてもらうなんて…)

ご飯をお腹にいれ、少し落ち着いてきた私は、
そんな感情が、段々と芽生え始めてきた。

紗奈
それにしても、本当に…ありがとうございました

カナト
いや。さすがにあのままほおっておくわけには行かなかったからね

お腹は満たされた。

…でもこれからどうしようか…。
…何かする気力も帰る家もない…。

カナト
…なんか訳ありか?

紗奈
……

よっぽど弱り果てた顔をしていたのか、
カナトさんは優しく声をかけてきた。

カナト
うーん…俺んち…はさすがに会ったばかりだしお互い気まずいよね…

カナト
そうだ、俺、ホテル代出すからさ、そこに泊まるっていうのは…?

紗奈
…え…。……

紗奈
どうしてそんなに優しくしてくれるんですか…?

カナト
…どうしてって…。あんなところ見せられたら…誰だってそうするよ。きっとね

紗奈
…それでもやっぱり優しい…と思います…

カナト
ん…

カナト
あっと…そうだ、この辺はあまり詳しくないらしいし、ホテル探し手伝うよ

そう言うとカナトさんは
ここの近くにあるホテルに電話をしてくれた。
幸いホテルの予約はとれ、そこへと向かうことになった。

 

>>