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カナト
…とりあえずこちら側からのゲートは閉じたから、呼び出さなければ、ラビスはもう人間界にはこれないはずだ

カナト
もう、二度と闇にそまっちゃだめだよ…

カナト
前を向いて歩いて。紗奈ちゃん…

カナトさんは、
眠っているりっちゃんの手をぎゅっと握っている、
パラレルワールドの紗奈に、そう言った。

カナト
これを。もう悪魔がよりつかないように

カナト
このペンダントを持ってさえいれば、悪魔が君の前に現れることはできないよ

パラ紗奈
……

パラレル紗奈は黙ってそれを受け取った。

カナト
元の世界に、帰ろう。紗奈ちゃん

パラ紗奈
…はい

パラレル紗奈は、こっくりとうなずいた。

カナト
紗奈ちゃん、俺、パラレル紗奈ちゃんを送っていくよ

カナト
それじゃあ、またね

紗奈
え…

紗奈
もう、行っちゃうの…?

カナト
大丈夫、また会えるよ

カナトさんは優しく微笑み、

ふわっと私の頭をなでた。

パラ紗奈
紗奈

パラレル紗奈がふいに声をかけてくる。

紗奈
…なに…?

私はその声に答えた。

パラ紗奈
…こっちの世界のりっちゃんにも会えて本当にうれしかった…

パラ紗奈
ラビくんは大差ないって言ってたけど、やっぱりこっちのりっちゃんは、私のりっちゃんじゃないって思った

パラ紗奈
もちろん優しいし、大好きだし、デート、本当に楽しかった

パラ紗奈
でも、こっちの、りっちゃんの好きな人は…私じゃないんだって思った

パラ紗奈
こっちのりっちゃんの好きな人は…東京で夢に向かってがんばってる…

そこで言葉を止め、

パラレル紗奈は私の方をじっとみつめた。

…そして目をそらす…。

パラ紗奈
…りっちゃんだけしか見えなくて、他に何もない自分じゃなくて…

パラ紗奈
メソメソして黒魔術に頼って…他人の幸せを羨んでばかりいて…自分の気持ちばっかり優先するような子じゃないの…

パラ紗奈
今の私みたいな子じゃないの…

パラレルワールドの紗奈の瞳から、
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

パラ紗奈
ごめんね、この世界の私…

パラ紗奈
この世界の私はね、私の理想の私だったよ…

紗奈
……

パラ紗奈
あなたにも…会えてよかった…

パラ紗奈
…さようなら。もう会うこともないと思うけど。…ありがとう

パラ紗奈
りっちゃんに、よろしくね…

紗奈
……うん

そういうと、カナトさんとパラレル紗奈は

魔方陣の上に立ち、ゆっくりと姿を消していった。

 

…パラレルワールドの紗奈。

辛さも乗り越えて、幸せになってほしい…。

 

…そしてカナトさん…また会えるよね…?

私、もっともっとカナトさんのこと、知りたいよ。

 

恋に生きたパラレルワールドの私は、

私のこと理想だって言ったけれど…。
恋に生きる私も、また素敵だなって、思ったんだよ。

 

 

 

第一部【完】

第二部に続く

 

 

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