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ラビス
ね、僕とキスしようよ。クスクス…

紗奈
(え…)

その言葉をきっかけに、私の足が…

自分の意思とは関係なく、一歩一歩、ラビスに、近づかされる。

紗奈
(い、いや…やめて…)

ラビの手が…私の頬に触れる。

ラビス
クスクス

息がかかる…

逃げられない…!

紗奈
(い、いやっ…)

青年
紗奈ちゃんから離れろ!!

ドンっという音と共に

突然部屋に現れる青年。

髪の毛はふわふわの水色、瞳の色は青。

そして青年の周りを取り囲む、光り輝くようなオーラ…。

雰囲気が変わりすぎてて、一瞬誰だか分からなかった…が。

紗奈
(え、カナト…さん…?)

ラビス
あーあ…つまらない邪魔が入ったなぁ

ラビス
紗奈ちゃんちょっと離れてて。危ないから

カナトさんの手が不思議な陣を描く。

するとラビスの体は突然、光り輝く鎖のようなもので拘束された。

ラビス
……!

カナト
…これでお前はもう動けないはずだ。…大人しく、魔界に帰れ

ラビス
…へぇ、やっぱり君、ただの人間じゃなかったんだね

ラビス
さしずめ君は”パラレルワールドパトローラー”ってとこかな?

カナト
……

ラビス
ところで僕が動けないだって?まさかまさか

ラビス
こんなもの効くわけないでしょー

電撃のようなものと共に
バリバリ、パーンと砕ける音。

カナト
危ない、紗奈ちゃん!!

そう言うと
カナトさんは私に覆いかぶさってきた…。

ラビス
あははっ簡単に壊れちゃったねー。クスクス

カナト
……!

ラビス
あーっと大丈夫。戦わないよ?紗奈ちゃんの部屋、荒らしちゃうのかわいそうだからね

ラビス
それじゃ紗奈ちゃん。またね。クスッ

そう言うと、謎の少年は

私達の目の前からフッと姿を消した。

カナト
…くそ…逃がしたか…

カナト
……

カナト
大丈夫…?紗奈ちゃん

声をかけてくる青年。

紗奈
う、うん…

紗奈
あの…カナトさん…だよね?…髪と瞳の色が…

カナト
あ、ああこれ…

カナト
…もうすぐ元に戻るよ

そうカナトさんが言うのと同時くらいに、

カナトさんの瞳と髪の色がすぅっと見慣れた色に戻り、

カナトさんを包む、光り輝くようなオーラも消えた。

紗奈
……

カナト
……

しばらく沈黙が私とカナトさんを襲う。

紗奈
…あの、カナトさんは…”パラレルワールドパトローラー”…っていう存在なの?

カナト
…ああ

紗奈
それは一体…

カナト
…パラレルワールド間の異変を察知して、世界を守るって感じかな…

カナト
…あんまり詳しいことは話せないんだけど…

紗奈
瞳や髪の色が変わっていたのは、どうして…?

カナト
普段制御している力を解放すると、あんな感じになるんだ

紗奈
そう、なんだ…

カナト
…こわい…?

紗奈
う、ううん…

紗奈
(そんなことはないけど…ちょっと、びっくりした…)

カナト
紗奈ちゃんさっきのやつに、なにか言われた?

紗奈
……

紗奈
ここはパラレルワールドの世界だって。私と、ここの世界の私を、交換したって

カナト
…なるほど…

紗奈
さっきの人が、カナトさんには何者かわかっているの…?

カナト
あいつは多分”悪魔”だ

紗奈
…悪魔…?

カナト
ああ

紗奈
もしかしてカナトさんは、いろいろなこと、知っていたの?

カナト
うん、大体は

紗奈
…そうなんだ

カナト
でもいきなりパラレルワールドだって言ったって、信じないと思ったから…

カナト
様子、みてた

紗奈
…だから、ずっと一緒にいてくれたんだね

カナト
…そういうことになるね

紗奈
(なんだ…私のこと気にしてくれてたわけじゃなくて、パラレルワールドパトローラーっていう存在だから、一緒にいてくれてただけ、なのかな…?)

 

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