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紗奈
あっカナトさん、腕、ケガしてる…

カナト
大したことないよ

紗奈
きゅ、救急箱、あるかな…

ガサゴソと探し始める私。

紗奈
あ、あった…

私はカナトさんの腕を包帯で手当てした。

紗奈
これで、大丈夫…かな?

カナト
…ありがとう

カナト
…すごく手慣れてるんだね

紗奈
私、スポーツやってるから、こういうの慣れてるの

カナト
そうなんだ

紗奈
うん

紗奈
……

カナトさんは”パラレルワールドパトローラー”

…そしてここは”パラレルワールド”です…か…。
理解したわけではないけれど…

今までのこと、そして黒い翼の悪魔…。

光り輝く鎖が突然現れたり…。

 

自分の想像を超えた何かが起こってるって、

認めるしか…。

 

私はパラレルワールド世界だと言われた

自分の部屋を見渡してみた。
再び、机の横のコルクボードに目が止まる。

紗奈
(…もし私が、東京にいかずに、京都に残っていたら…)

紗奈
(りっちゃんと恋人同士になる、そんな未来も、あったのかな…)

紗奈
(…りっちゃん…)

紗奈
…元の世界に…戻りたいよ…

こっちの世界での、りっちゃんのことを思い出し、

思わずつぶやく。

カナト
…大丈夫。元の世界に戻る方法はあるよ

紗奈
ほんと?

カナト
うん

カナト
そもそも君を元の世界に戻し、パラレルワールド世界の君をこの世界に戻すことが、パトローラーの使命だから…

紗奈
…どうすれば、元の世界に戻れるの?

カナト
実は君がこの世界をパラレルワールドだって認識するのがまず一つ目のキーなんだ

カナト
そして君が、初めてこの世界に足を踏み入れた場所に戻る必要がある

紗奈
(この世界に初めて足を踏み入れた場所…)

紗奈
東京の、私の部屋…?

カナト
…そこが、出発点?

紗奈
うん、そう、だと思う…

私とカナトさんは急いで東京に戻り、東京の私の家である

フラワーマンション203号室へと向かった。

紗奈
(そうか…)
紗奈
(ここは”地元に残った私”の世界だから、フラワーマンション203号室には誰も住んでなくて、空き家になってた…って感じなのかな…)

カナトさんが「部屋をみたい」と大家のおばさんに頼むと、

以外にも大家さんはあっさり鍵を開けてくれた。

紗奈
(…これは絶対カナトさんがかっこいいから…だと思う)

紗奈
…むぅ…大家さんったらっ、私の時はいくら言っても全然とりあってくれなかったのに~

カナト
あはは…

カナト
…とりあえず怪しまれないうちに、ゲートを開く作業をするね

そういうとカナトさんは不思議なアイテムで

フラワーマンション203号室の床に魔方陣を描いた。

紗奈
(マジックとか物理的なもの…じゃないのかな…)

紗奈
(魔方陣…光ってる…)

カナト
それじゃ、行くよ

カナト
魔方陣の上に立って

紗奈
う、うん…

カナト
え…と、ちょっと嫌かもしれないけれど…はぐれてしまうとまずいから…

そういってカナトさんは、私をぎゅっと抱きしめた。

カナト
…ごめんね、すぐ終わるから

紗奈
は、はい…大丈夫です…

カナト
出来れば紗奈ちゃんの方からも、ちゃんとつかまっててほしい

紗奈
え、あ、はい…

ギュっとカナトさんを抱きしめる。

紗奈
(…なんだかドキドキして、何も考えられないよ~…)

カナト
じゃあ、行くよ

紗奈
う、うん…

来るときとは違い、
不思議な温かい光に包まれながら
私は”この世界”を後にした。

 

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